緑内障ってどんな病気?
緑内障とは、徐々に見える範囲が狭まっていく疾患です。進み方は非常にゆっくりで、かなり進行するまで自覚症状は現れません。また、両目とも同時に進行するケースは稀だとされています。
日本には緑内障の推定患者数が400万人程いると言われていますが、実際に治療を受けているのはそのうち20%程度だと報告されています。
40歳以上の中高年者に多いため、当てはまっている方は定期的に眼科へ受診することをお勧めします。
緑内障の症状
緑内障の症状は、ゆっくり進行します。視野の狭まりもゆっくり進むため、自覚した時にはかなり進行していたというケースも少なくありません。
- 見える範囲が狭くなった
- 目が痛い、視界がかすむ
- 視野の狭まりが大きくなったような気がする
- 視力低下
- 突然の頭痛や吐き気、目の痛み、充血(急性緑内障の可能性が高い)
緑内障は早期発見・
早期治療が重要です
緑内障を治す治療法はありません。発症すると一生付き合っていく必要があるので、根気よく治療を続けることが重要です。
緑内障によって失われた視野は元に戻りません。40歳を超えた方は、症状がなくても年に1度人間ドックや健康診断を受けるよう心がけましょう。
緑内障の原因
眼圧(眼球の硬さ)が高くなった結果、神経が圧迫されて障害を受けることで発症します。
眼圧が高くなる要因は複数あり、その要因によって以下のように分類されています。
緑内障の主な2つの種類
緑内障は、眼圧が高くなる疾患・異常がみられない「原発緑内障」と、目や体の疾患、薬、目の外傷などによって眼圧が高くなる「続発緑内障」に分かれます。
日本人が発症する緑内障のほとんどは、原発緑内障の中の「原発開放隅角緑内障」で、特に眼圧が正常値である「正常眼圧緑内障」が多い傾向にあります。
原発緑内障
眼圧上昇の原因が分からないタイプの緑内障です。
眼圧が正常値にも関わらず、緑内障を患っている「原発開放隅角緑内障」と、房水の出口が虹彩にブロックされることで発症する「原発閉塞隅角緑内障」があります。
特に原発開放隅角緑内障は、欧米人よりも日本人に多く見られる緑内障です。
続発緑内障
白内障やぶどう膜炎、外傷性の疾患、糖尿病、薬の副作用などによって発症するタイプです。また、花粉症などの治療薬として処方されたステロイド薬を長期間使用すると、眼圧が高くなる可能性もあります。
隅角の状態によって、「続発開放隅角緑内障」と「続発閉塞緑内障」に分類できます。
原因となる疾患の治療ができる場合は、その治療を先に行います。それが難しい場合は、薬物治療やレーザー治療、手術治療を選択します。
緑内障の検査
眼圧検査
緑内障の診断と管理に重要なのは、眼圧の数値です。眼圧検査とは、眼圧の数値について調べる検査です。測定方法は3つあり、測定チップを目に直接触れさせる「ゴールドマン圧平眼圧計」と、目に空気を吹きかける「非接触型眼圧計」、非常に細いチップを一瞬触れることで計測する「アイケア」に分かれます。
なお眼圧は血圧と同じように、一日の中でも上がったり下がったりします。角膜の厚さや剛性、季節、運動・体位によっての影響も受けやすいとされています。
隅角検査
検査用のコンタクトレンズを使い、隅角の広さや異常の有無を調べる検査です。
隅角の開閉や癒着、房水流出部の色素沈着等の有無を調べていきます。点眼麻酔を行った後、専用コンタクトレンズを装着して観察します。
眼底検査
目には見た物を脳に伝える視神経が存在します。そして網膜の神経線維が集まって、眼球の外へ出ていく部分を「視神経乳頭」といいます。眼底検査とは視神経乳頭が集まっている部位に、異常が生じていないかを調べる検査です。
また眼底検査では、緑内障以外の疾患を見つけ出すこともできます。
視野検査
視野(目を動かさなくても見える範囲)の広さを調べる検査です。視野の欠け具合や障害の度合いから、緑内障の進行具合がわかります。
専用の機器の前に座り、小さい光が見えた時にボタンを押していきます。
光干渉断層像検査
網膜や視神経乳頭の断面を撮影し、それぞれに異常が生じていないかを調べる検査です。視野の変化が起こる前に、緑内障の診断をするのに有効とされています。
緑内障の治療
緑内障によって失われた視野や視力、障害された視神経を、元の状態に戻すことはできません。そのため緑内障の治療は、視野欠損などの進行のスピードを抑えるために行われています。
治療法は主に、薬物治療とレーザー治療、手術に分かれます。進行を遅らせることで、QOLと見える範囲・質を維持させます。
点眼薬
よく原発開放隅角緑内障の治療として用いられる療法です。緑内障の種類や進行度合い、眼圧の状態、目の健康状態などに考慮して、患者様に合った点眼薬を1種類、もしくは複数種類を組み合わせて処方します。
レーザー治療
房水の出口が塞がれている場合は、レーザーをあてて房水の排出を促す必要があります。70%程度の有効性があると評価されている方法です。
レーザーをあてても眼圧が下がらない場合は、手術で房水の排出を促します。
マイクロパルスレーザー線維柱帯形成術(MLT)
点眼治療を続けても改善されなかった方や、仕事のスケジュールなどで定期的な点眼が難しい方、点眼薬の副作用が辛い方、妊娠中・授乳中で点眼治療が難しい方などに向いている方法です。
眼圧上昇を防ぐ点眼と麻酔の点眼を行った後に、目の上にコンタクトレンズを乗せ、そこにレーザーを当てていきます。
術後の炎症を防ぐため、術後1週間程度は抗炎症点眼をさす場合があります。治療後からすぐに、普段通りの生活が送れるというメリットがあります。
レーザー虹彩切開術(LI)
目の虹彩部分に穴を開け、房水の詰まり(瞳孔ブロック)を解消させる方法です。瞳孔ブロックを解消させることで前後房の圧力差をなくし、隅角を開大させていきます。瞳孔ブロックによる原発・続発閉塞隅角緑内障に有効とされている治療法です。
術前に点眼麻酔を行い、虹彩切開用のコンタクトレンズを着けてからレーザーを当てていきます。
術後は視界が若干かすみますが、数日程度で改善されます。
手術
低侵襲緑内障手術(MIGS)は、従来の手術よりも手術の傷が小さく、治りも早い手術です。
世界的に行われているMIGSとしては、下記のものが挙げられます。
線維柱帯切除術: Microshunt(マイクロシャント)、XEN(ゼン)
線維柱帯切開術:Trabectome(トラベクトーム)、カフークデュアルブレイド、μフック(マイクロフック)、Hydrus(ハイドラス)、スーチャートラベクロトミー
その他:iStent(アイステント)
MIGSは、下記の共通の手技で行われています。
- 白目(結膜・強膜)に傷をつけない
- 黒目(角膜)に2~3mmぐらいの傷を作る
- 作った傷口から器具などを挿入し、線維柱帯を切る(もしくはインプラントを入れて固定する)
当院では、μフックを用いた線維柱帯切開術とiStentを行っています。
眼内ドレーン挿入術
(iStent(アイステント))
iStentは、線維柱帯に金属製のインプラントを1~2個置くことにより、インプラント部分からの水の流れを改善させる方法です。
インプラントを設置するだけで済むので、目にできる傷も少なく済みます。その結果、術後の一時的な出血や眼圧上昇といった合併症は、かなり稀なものになりました。
iStentの進め方
- まず、通常通り白内障手術を実施します。
- 患者様の顔と手術用顕微鏡を傾け、線維柱帯を見る隅角鏡を目に載せます。
- iStentを目の中に挿入し、線維柱帯にも1~2つ挿入・固定します。
- iStentの固定をチェックして手術終了となります。
従来の白内障手術と比べて、+5~10分程で手術が終わります。特に痛みなども伴いません。
iStent(アイステント)が
向いている方
日本では、iStent単独で手術を行うことはできません。あくまで、白内障手術と同時にのみ行うことが認められています。
「緑内障の症状は点眼で緩和できているが、白内障手術を勧められる方」がiStentの適応になると考えています。
緑内障で点眼薬を1~2本処方されており、かつ白内障で見えにくさを自覚している方は、かかりつけの先生に相談することをお勧めします。