特集『ちょっとまれな病気シリーズ』

白内障や緑内障に関しては、当院HPはじめ、多くの情報がありますが、比較的珍しい病気ではなかなか情報が少ないようです。そこで、ちょっとまれな病気について、現在のトピックも含めて、シリーズでご紹介させていただきます。

上輪部角結膜炎(SLK)

ドライアイと同様にゴロゴロする症状がありますが、ドライアイとして見逃される病気です。目の上のほう白目(結膜)と瞼がこすれることで、傷ができ、上まぶたの不快感、ごろつきが出てきます。結膜の傷を見逃さないように観察する必要があります。治療は、ジクアス®やムコスタ®という、粘液を増やす点眼を用いることで改善します、ただ、それでも改善しない場合は、涙点プラグで涙点をとじ、涙をふやすことや、結膜を切開しひきのばす手術で改善します。当院では、重症度別に治療を選択しています。写真は白目の充血、傷がある写真(黄緑に染まっているところが傷)、治療後の傷が消えた写真です。

上輪部角結膜炎(SLK)

涙小管炎

ずっと目ヤニがでて、抗菌薬の点眼でも効果がないという方に、時々見られます。涙小管という場所に菌石といわれる菌の塊が詰まっていて、そこが原因で、炎症を起こします。涙点が大きく拡大していることもあります。診断は、菌石を見つけることですが、奥深くあり、なかなか見つけれない場合もあります。当院では目ヤニを顕微鏡で確認することで、菌石によくふくまれる放線菌を見つけて診断します。治療は菌石を麻酔したのちに取り出し、さらに再発しないように抗菌薬の点眼と内服をします。1年以上見逃されていることもあります。この病気は疑うことが重要な病気です。

涙小管炎

急性前部ぶどう膜炎

ぶどう膜炎とは、虹彩や脈絡膜といった血流が豊富な眼内の組織の炎症で、様々な全身疾患と伴って出てきます。そのぶどう膜炎の一つに、急性前部ぶどう膜炎というタイプがあり、目の前の組織(虹彩や前房)に炎症を引き起こし、強い充血や疼痛、かすみを生じます。ステロイド薬を点眼したり、結膜下注射することで、炎症を抑え治療します。ひとみ(瞳孔)がかたまる虹彩の癒着を起こすことがあります。初期治療が重要です。リウマチなどの全身疾患に合併することがあります。著明な充血とかすみが出ればお近くの眼科に行ってください。(写真-急性前部ぶどう膜炎の1例)

急性前部ぶどう膜炎

タイゲソン角膜炎

角膜という目の表面にある組織に炎症が生じて、透明な角膜が一部白くなることを角膜炎といいます。角膜炎の原因には、ばい菌感染や過剰な自己免疫(自分自身で自分の組織を攻撃すること)があります。一般的にはコンタクトレンズの合併症として認められます。その角膜炎のすこし特殊な形として、タイゲソン角膜炎があります。タイゲソン先生というとても偉い先生が見つけたので、この名前がついています。特徴として、症状は痛み、不快感、まぶしさが出現し、角膜に白い星の形をした点々が出てきます。原因は同じ患者さんでいつも同時期に再発することがあるため、アレルギー説やウイルス説が疑われていますが、結局わかっていません。治療は、ステロイドの点眼を行います。通常は反応はいいのですが、前述のように再発することが多いです。写真はタイゲソン角膜炎の1例です。

タイゲソン角膜炎

円錐角膜

円錐角膜は眼の表面の透明な組織である角膜が薄くなり、突出する病気です。明らかな原因は不明ですが、アトピー性皮膚炎やダウン症候群に合併しやすく、目をこすることや触ることが、進行を進めやすくするといわれています。発症率は1万に1人ですが、(新居浜市の人口が12万とすると12人?)、実際いしづち眼科では初期も含めると月に1~2人にいらっしゃいますので、実際は患者さんの数は多いのかもしれません。この円錐角膜は、角膜のひずみである乱視の成分が、角膜の上と下とで異なり、角膜の下で強い乱視成分があることが特徴的です。30~40歳まで進行することがあり、進行すると、乱視が強くなり、視力も低下します。場合によっては、急性水腫といわれる角膜の水ぶくれをおこし、視力が急激に低下します。円錐角膜の治療は、初期はハードコンタクトレンズを使用します。ハードコンタクトレンズで角膜をおさえることで、進行を緩徐にして、かつ、視力も向上します。最近ではクロスリンキングといわれる方法を用いて、角膜の固さを強くすることで進行を抑制することが知られており、効果も良好と報告されています。進行し、ハードコンタクトレンズが装用できにくい場合は、ソフトコンタクトレンズの上に、ハードコンタクトレンズをのせるピギーバック法(日本語では肩車すなわち2枚重ねするという意味)を使用します。それでも、進行し、視力が低下した場合は角膜移植が必要になります。ですので、早期に見つけて、進行しないようにすることが重要です。早期発見には、角膜形状解析といわれる角膜の乱視をカラーで表示する機械が有用です。当院では、疑わしい症例では積極的に角膜形状解析を行っています。また、円錐角膜用ハードコンタクトレンズの処方も行っています。写真は、角膜形状解析の結果で、左は正常、右は円錐角膜です。

円錐角膜

ばい菌感染が原因ではない角膜炎

角膜炎は、目の表面の角膜に炎症を起こす疾患です。多くはコンタクトレンズなどに付着していたばい菌など、感染で起こるのですが、感染以外でも角膜炎はおきます。このシリーズで紹介したタイゲソン角膜炎もその一つですが、もう少し認められるのに、カタル性角膜潰瘍とか免疫性角膜浸潤といわれる疾患があります。全身疾患に、膠原病があったり、まぶたの縁が汚れていると過剰な免疫反応が生じ、角膜炎を引き起こします。角膜の周辺にできることが多いです。診断は、「角膜炎の見た目」 ということで決めますが、なかなか診断は難しいです。治療はステロイド薬を使用しますが、何度も再発することがあるので、注意が必要です。写真はその1例です。

ばい菌感染が原因ではない角膜炎

強膜炎

それほどまれではないですが、目が充血し、痛いということで来られることが多い病気です。強膜とは、眼球を構成する壁で、コラーゲンという成分でできています。そのコラーゲンに炎症を起こすことで、強膜の血管が拡張し、痛みを引き起こします。強膜炎には、結膜という白目のすぐ下の血管が拡張し、比較的痛みが少なく、自然軽快もある上強膜炎と強膜血管が拡張する強膜炎があります。結膜炎は、アレルギーやばい菌感染など、外からの刺激で引き起こされますが、強膜炎は、内的な要因で発症することが多いです。特にリウマチなどの膠原病を持っている場合、強膜炎を発症することがあります。ただ、そのような全身疾患がなくても、ストレスなどがあると、何度も再発します。治療としては、ステロイドの点眼で行います。場合によっては、ステロイドの内服やほかの免疫抑制剤を使用することもあります。ステロイドには、点眼でも、いろいろな副作用がありますので、副作用を見ながら適宜使用することが必要です。重症例では、強膜がどんどん薄くなってくる場合もあります。また、ごくまれですが、ウイルス性や細菌性の感染による強膜炎もあり、注意深く診断する必要があります。写真は、強膜炎の写真です。充血+痛みを自覚すれば早めに眼科を受診しましょう。

強膜炎

硬いマイボーム腺梗塞

診察をしているとよく”蝋のようなマイボーム腺梗塞”の患者さんを経験します。この”マイボーム腺梗塞”は通常のマイボーム腺という油の分泌物の入口が詰まる病気ですが、場合によっては、マイボーム腺の入り口から少し深いところに、まるで蝋燭のような白くてかたいつるつるした固まりがあり、時々白目(結膜側)に飛び出て、異物感を生じます。脂質中のワックスエステル(いわゆる蝋と同じ成分)が固まっていると思われます。とても固いので、圧縮ではとれず、針でマイボーム腺を切開して除去します。除去したものは本当に固く、ちょっとあっためたくらいでは溶けませんでした。マイボグラフィーという機会では黒く抜けます(写真の矢印)。たぶん同じ脂質でも、赤外線光をブロックするのでしょうか・・。ぽろっと取れますし、見た目はよくなるので患者さんは喜ばれます。硬いので自分では取れないと思いますので、眼科に相談してください。

硬いマイボーム腺梗塞

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